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The Merry Widow by National Ballet of Canada (6/21 & 22 @Four Seasons)

NBCの19/20シーズンの最終公演、The Merry Widow。

ちょっと映像が古いですが、トレイラー。

BrendanはPritisch役で出演。Brendanの出演する週末の公演、6/22夜公演は、22年間所属していた、プリンシパルダンサーのXiao Nan Yuのリタイア公演ということでチケット争奪戦でした。でも頑張って、いつもの席を確保。

Nanのダンスは、Physical Thinkingで一度観たきりなので、正直、特に思い入れもないダンサーでした。でも、もらい泣きしてしまったくらい、舞台上のカンパニーと客席のファンのNanへの愛があふれていて、今まで観た中で一番美しいカーテンコールだった…!あの場に立ち会うことができたことを、とても光栄に思います。22年間も踊った舞台を離れるのはどんな思いだったんだろう。私は最初の会社は9年半勤めて退職したのだけど、比べ物にならないな。

Brendan。Brendanの、長い手足と美しい肢体を使ったダンスは本当に、観ていて高揚させられます。息を飲むというか。Markアンジョや佐野ファントムを観ている時の高揚感に似ている、息ができない感じ。そして彼は、役作りとしての細かい芝居や表情演技も多くて、そこも私が彼のパフォーマンスが好きな理由です。舞踏会で、パートナーをGuillaume演じるDaniloに奪われて、苛立ったようにふくれて舞台を去るBrendan…かわいい。服の裾、きちきち正したりね。

そして江部さんの鋭さのあるダンスと、江部さんxJillianのペアダンス!上品さと少女のような可憐さと優雅さを併せ持つJillianも、アリスで観て以来、大好きなダンサー。江部さんとBrendanは今回、同時に舞台にいることが多かったので、両方を目で追うのに必死でした。江部さんのダンスももっと観たいのだ…。

もう一人の日本人ダンサー、佐藤航太さんは今回、リードダンサーとして大活躍だった。彼はジャンプ力がすごいので、優雅さというよりも快活で元気のもらえるダンスを見せてくれます。Swanの道化、Aliceのカエル、どちらも大好きだった。彼は19/20シーズンで、Second Soloistに昇進です。

■Cast
Hanna Glawari
Xiao Nan Yu (June 19, 22 at 7:30 pm)
Heather Ogden (June 20, 22 at 2:00 pm)
Sonia Rodriguez* (June 20 at 7:30 pm)
Greta Hodgkinson (June 21, 22 at 7:30pm / June 23 at 2:00 pm)

Count Danilo Danilowitch
Guillaume Côté (June 19, 22 at 7:30 pm)
Harrison James* (June 20, 22 at 2:00 pm)
Piotr Stanczyk* (June 20 at 7:30 pm)、
Evan McKie* (June 21 at 7:30 pm/June 23 at 2:00 pm)

Valencienne
Jillian Vanstone (June 19, 22 at 7:30 pm)
Miyoko Koyasu* (June 20, 22 at 2:00 pm)
Tina Pereira* (June 20 at 7:30 pm)
Chelsy Meiss* (June 21 at 7:30 pm/June 23 at 2:00 pm)

Camille de Rosillon
Naoya Ebe* (June 19, 22 at 7:30 pm)
Jack Bertinshaw* (June 20, 22 at 2:00 pm)
Skylar Campbell* (June 20 at 7:30 pm)
Félix Paquet* (June 21 at 7:30 pm/June 23 at 2:00 pm)

Baron Mirko Zeta, Pontevedrian Ambasaddor to France
Jonathan Renna* or Etienne Lavigne*

Njegus, Secretary to the Ambassador
Etienne Lavigne* or Skylar Campbell*

Kromov, Undersecretary at the Embassy
Christopher Gerty* (June 19, 20 at 7.30pm)
Ben Rudisin* (June 20, 22 at 2:00 pm)
Joe Chapman* (June 21, 22 at 7.30pm / June 23 at 2:00 pm)

Pritisch, Undersecretary at the Embassy
Brendan Saye* (June 19, 20, 22 at 7.30pm)
Brent Parolin* (June 20, 22 at 2:00 pm)
Donald Thom* (June 21 at 7:30pm, June 23 at 2:00 pm)

Leading Pontevediran Dancer
Kota Sato* (June 19, 20, 22 at 7.30pm)
Joe Chapman* (June 20, 22 at 2.00pm)
Larkin Miller* (June 21 at 7:30 pm / June 23 at 2:00 pm)

* Debut

Brendan Saye is promoted to Principal Dancer!!

何と、BrendanがFirst SoloistからPrincipal Dancerに昇格したという素晴らしいニュースが。



ファン歴の浅い私ですが、私にとってはone and onlyのバレエダンサーなので、本当に嬉しい。Well deservedだと思います。
Huge congratulataions to Brendan!!! I am so so thrilled to see you on the Four Season's stage next season!

それから、Brendanの彼氏の(Donald) ThomもSecondからFirst Soloistに同時昇格!(Thomと呼んでいるのは、彼の雰囲気が何となく、ドナルドよりもトムっぽいからです)この前のリハでも、舞台の隅で二人で笑い合っているのが微笑ましかった。I am so happy for them both!

Phyisical Thinking by National Ballet of Canada (6/2M, 7, 8M @Four Seasons)

Brendanのためにトロントまで2週連続遠征、まあ近いけどね。



Physical Thinking
Brendanのダンスはやっぱり違う。ダイナミックかつ繊細、それていて圧倒的な安定とバランスを併せ持ち、さらにその体格によって女性ダンサーをさらに美しく見せる術を持っている。ああ、素晴らしい。好き。彼の持つ美しさに見惚れます。コールドの中だと特に、手足の長さや動きのダイナミックさが光ります。

Chelsyと江部さんも素晴らしかったよー。Chelsyは舞台で太陽のように輝く、カリスマ性を持っていると思う。表情がいつもチャーミングで目で追ってしまいます。江部さんは、踊りにシャープさ、鋭さがあって好き。同じ日本人として応援したくなります。

6/7夜は、バスの大渋滞によりAct2しか観られず、6/8昼はバスの時間の都合でAct1しか観られませんでした。Brendanは6/7夜のAct1に出ていて、それ目当てでチケ買ったので残念…しかも江部さんもAct2に出なかった。ただ、(Donald) Thomの踊りが素晴らしくて大満足。彼のMad Hatterは素晴らしかったのだけど、その時に感じた鋭さよりも、今回、彼の踊りは繊細で優しく、やわからい春の日差しのようだと感じました。

Class on Stage
6/8は午前中、Class on Stageという、日々のバレエクラスをFour Seasonsシアターでやるイベントに参加してきましたた。チケットは$10。Brendanがいて、彼のピルエットやステップが見られてハッピー。

そこであったQ&Aセッションが面白かったので残しておきます。NBCはnot-for-profitだけど、仕組みは、浅利氏時代の劇団四季とよく似てると思います。ただ、マタニティリーブ取得後、子育てしながら復帰というケースは、四季にはないだろうね。

雇用システムについて
NBCの所属ダンサーは全員フルタイムの社員で、70人。そのうち何人かは踊らないけど、過去に様々な役を演じたため、Character Artistとして所属。NBCのプロダクションに出演するダンサーは全てNBC所属ダンサー、外部ダンサーとの契約は基本なし。ダンサーの収入は、カナダの組合基準に準じ、入団1年目から支払われる。ダンサーは6月にシーズンが終わればバケーションもとれる。

普段のレッスンについて
ダンサーは月曜から金曜、公演がない日も含め、一日6時間のバレエクラスを受ける。公演中は、さらに2時間のリハにも参加。その日の公演に出演予定のないダンサーはバレエクラスに参加しなくても良いが、コンディションを整える必要があるから、大抵参加する。NBCはダンサーに、フリーでアクセスできるジムや、マッサージも提供してる。食事に関しては、専用のアドバイザリー部署がある。現在のADが英国式メソッド出身なので、NBCは英国式メソッドを採用している。

プロダクションについて
例えばSleeping Beautyにはほぼ全所属ダンサーが出演するが、プロダクションによっては一部しか出演しない作品もある。リハ期間はプロダクションによって変わるが、たいてい2週間~6週間。キャスティングは、ADと振付家が決める。正式アサインされたアンダー以外にも、約5人が一つの役を学び、出演できる状態にしておく。

入団と退団について
毎年、入団希望に300ほどの応募がある。バレエを早くから始めても、天性の身体的、芸術的才能がなければ、プロのバレエダンサーにはなれない。入団に際して、身長制限は特にない(NBCには実際、背の高いダンサーも背の低いダンサーもいる)。大体18歳前後で入団するダンサーが多い。人によって自身の身体機能についてどう感じるかには違いがあるし、リタイアの年齢は特にない。

所感
一番興味深かったのが、Why do dancers dance?という質問に対する、「勿論、人それぞれ理由はあるけれど…」と前置きをした上で、「ダンサーは生活のため、仕事として踊っている」という回答。これ、私自身がシアター業界に入ってから本当に感じることなのです。彼らにとってはjobであり、make a livingなのよね。彼らにフィットしたのがたまたまダンスや演じることで、プロとして稼げる才能と能力を持っていた。というだけで、基本的には彼らも、我々仕事人と同じ。でも他の仕事と同様、好きじゃなければ続けられないだろうし、勿論、人の心を動かせる本当に素晴らしい仕事だと思う。それをサポートできる仕事に携われているのは、本当に光栄です。


インタビュー
無料チケットの文句につられ、シアター前で行われていたインタビューに参加。patron research大事だよね…。

質問は、What is the word you think of when you hear of NBC? Did you see any productions of NBC? How did you feel about them? Would you like to come back next season? What was special/characteristic about NBC? How can we expand audience diversity? など。

最後の質問なんかは、カナダのシアター業界全体が取り組むべき課題で、leading companyであるNBCやStratfestがやらなきゃいけないことだと思う。最初の質問は、その場で思い浮かんで答えた言葉はbeautyだったけど、classやgraceも後から思い浮かんだわ。


次回NBCの公演は、The Merry Widow。しかしBrendanはリードロールでは出ないことで発表された…かつ、江部さんは今回のショーで引退するダンサーと組むので、 チケットが全然ない。行くけどね。


■Physical Thinking Casting
The Vertiginous Thrill of Exactitude

Hannah Galway, Chelsy Meiss, Calley Skalnik
Naoya Ebe, Harrison James (June 1, 5 at 7:30 pm)

Hannah Galway, Jeannine Haller, Jordana Daumec
Skylar Campbell, Brendan Saye
(June 2 at 2:00 pm)

Tirion Law, Tina Pereira, Jordana Daumec
Siphesihle November, Félix Paquet (June 6 at 7:30 pm)

Hannah Galway, Jeannine Haller, Hannah Fischer
Skylar Campbell, Brendan Saye (June 7 at 7:30 pm)

Tirion Law, Chelsy Meiss, Calley Skalnik
Siphesihle November, Donald Thom
(June 8 at 2:00 pm)

Approximate Sonata 2016

<1st & 5th Sonata>
Sonia Rodriguez and Spencer Hack (June, 6 at 7:30 pm/June 8 at 2:00 pm)
Sonia Rodriguez and Donald Thom (June 2 at 2:00 pm)
Jenna Savella and Donald Thom (June 7 at 7:30 pm)

<2nd Sonata>
Hannah Fischer and Christopher Gerty (June 1, 5 at 7:30 pm)
Xiao Nan Yu and Brent Parolin (June 2 at 2:00 pm)
Xiao Nan Yu and Brendan Saye (June 6 at 7:30 pm/June 8 at 2:00 pm)
Antonella Martinelli and Brent Parolin (June 7 at 7:30 pm)

<3rd Sonata>
Svetlana Lunkina and Félix Paquet (June 1, 5 at 7:30 pm/June 8 at 2:00 pm)
Greta Hodgkinson and Kota Sato (June 2 at 2:00 pm/ June 6 at 7:30 pm)
Greta Hodgkinson and Ben Rudisin (June 7 at 7:30 pm)

<4th Sonata>
Tanya Howard and Kota Sato (June 1, 5 at 7:30 pm/June 8 at 2:00 pm)
Chelsy Meiss and Guillaume Côté (June 2 at 2:00 pm/June 7 at 7:30 pm)
Jenna Savella and Trygve Cumpston (June 6 at 7:30 pm)

The Second Detail

Jordana Daumec or Sonia Rodriguez or Hannah Fischer, Tanya Howard or Stephanie Hutchison or Andreea Olteanu, Rui Huang or Calley Skalnik or Jeannine Haller, Antonella Martinelli or Selene Guerrero-Trujillo or Hannah Galway, Chelsy Meiss or Mallory Mehaffey, Heather Ogden or Kathryn Hosier or Tirion Law, Jenna Savella or Greta Hodgkinson or Jillian Vanstone

Jack Bertinshaw or Brent Parolin, Skylar Campbell or Donald Thom or Spencer Hack, Siphesihle November or Naoya Ebe or Joe Chapman, Ben Rudisin or Harrison James or Guillaume Côté, Kota Sato or Jimmy Coleman or Alexander Skinner, Brendan Saye or Giorgio Galli or Christopher Gerty, Nan Wang or Félix Paquet or Nicholas Rose

Indecent @Segal Centre (4/28-5/1, 5/18-20, 2019) Mark Uhre as Avram インディセント

Markの2019年二本目は、モントリオールにあるSegal CentreでのIndecent。

トロントからモントリオールは、飛行機だと1時間ですが車か電車だと5~6時間くらいです。モントリオール行きの飛行機が数時間遅れた経験があるので、1回目は往路バス・復路電車で、2回目は往復電車で行ってきました。前回のカリフォルニアに比べたら近いので助かる。

Segal Centreは、モントリオールのJewish(ユダヤ)コミュニティに位置しており、演出家でありSegalのArtistic DirectorであるLisa Rubinは、BWでIndecentを観た人々から「IndecentはSegalで上演すべきだよ」と言われたようです。この『Indecent』は、ユダヤ人であるSholem AschによってYiddishで書かれ、BW上演時にそのテーマを問題視された『God of Vengeance』という戯曲に基づく戯曲です。Segalは、このGod of Vengeanceをオリジナル言語であるYiddishで(英語&フランス語字幕付)2006年に上演したことがあり、mandateの中にも、"The Segal also believes in the importance of celebrating and exploring Jewish identity through the arts.(Segalは、アートを通し、ユダヤ人としてのアイデンティティを称賛し、探求することが重要だと信じています。)"という一文があるため、今回Indecentを上演する意義は大きいと感じました。

Indecentは2015年に書かれた新しい戯曲で、2016年にオフブロードウェイで、2017年にブロードウェイで上演され、2017年のトニー賞(演出賞&照明賞)を受賞しています。予習のために、観劇前に日本語で書かれた感想やブログを検索してみたけど、日本人の方で観劇された人が絶対的に少ないのでしょう、日本語の情報がほとんど見つけられませんでした…。日本語キーワードで検索しても英語ページしか表示されないくらい。Markがメインロールを演じることとYiddishが混じっているのではないかという懸念から、予習のため、戯曲を予め購入して読みました。が、半分くらい読んだところで「ああ、これは実際に観てみないと分からん…」と感じ、初回のショーを観た後に読み直しました。というのも、役者7人+オケ3人の10人で演じられる舞台ですが、役者1人が6~8役を演じ分けるので、登場人物がめちゃくちゃ多く、時代もバラバラです。実際に観た後だとだいぶスッキリ戯曲の流れを理解できるようになりました。とはいえ、予習なしで初観劇に臨んでいたら絶対に理解できなかったと思います。というわけで、観劇される方はしっかり予習をお勧めします。英語字幕がつくので、Yiddishは理解できなくても英語が理解できれば大丈夫です。あと、ドイツ語が理解できれば、理解できないよりはちょっと楽しめるシーンはあります。

トレイラーはこちら。


あと、リハの映像があるので、こちら。

(Mark、たくさん映ってます)

※この戯曲では、登場人物が「完璧できれいな英語を話している時は、イディッシュ語を話している時」、「アクセントのある英語を話している時は、彼らの第二言語である英語を話している」という設定です。

<あらすじ>
ゴーストたちのtroupe(巡業をする、役者グループ一団を指す英語)が舞台に現れ、袖口から、灰を床にサラーッと落とす。彼らはその灰を振り払い、一団のStage ManegerであるLemmlが語り出す、「今日は、ある劇をお見せしたい。その劇は私の人生を変えた劇なんだ。ただ、どういうわけか、その劇のラストシーンを思い出せなくて…でも大丈夫、始め方は分かっているから」。Lemmlは、年上の役を演じるThe ElderのOttoとVera、若い役を演じるThe IngenueのAvramとChana、The MiddleのHalinaとMendel、そして3人の演奏家を紹介する。このtroupeたちがこれから芝居を繰り広げるという流れです。

Mark演じるSholem Aschが妻Madjeに、書き上げたばかりのGod of Vengeanceを読ませるシーンからスタート。これは詩を書いていた彼の初めての戯曲で、Madjeは大変気に入り、ドイツ人の有名役者であるRudolph Schildkrautを起用してベルリンで上演することを提案。Madjeが戯曲の中で最も美しいシーンだと表現した、2人の女性の雨の中のラブシーンには、AschがMadjeに向けた愛の言葉が使われていた。

ワルシャワのサロンで、戯曲のリーディングの機会を得たAsch。しかし、女性同士が愛を確かめ合うシーンに差し掛かった時、参加者は怪訝な顔をし、「なぜ女性同士がこんなことを言い合うのだ?これ以上読みたくない」と投げ出す中、参加者の一人、テーラーだったLemmlだけがAschと一緒に、女性同士のラブシーンの場を読み合わせる。リーディングを終えた後、Lemmlは「素晴らしい!これこそ劇というものだ!」という反応をした一方、Aschのメンターであり主催者であったPeretzは、ユダヤ教で禁止されている同性愛やユダヤ人の罪の部分を描いた戯曲内容に苦言を呈し、「Burn it(燃やすべきだ)」とAschに言い放つ。その言葉を聞いてAschはサロンを飛び出し、Lemmlに「ベルリンで会おう」と声をかけた。

ドイツ・ベルリンでのキャバレーシーン。その後、God of Vengeanceのベルリン上演に向けて、RIfkereとMankeを演じる女優二人が話している。そこへLemmlが、拙い英語を話しながら登場。女優の一人がJewishだったので、Lemmlと女優はイディッシュ語で話し始める。Lemmlが「ステージマネージャーのアシスタントとしてベルリンに来た、God of Vengeanceという戯曲が本当に素晴らしい、作者のAschは天才だ」と話しているところに、有名役者であるRudolph Schildkrautがやってくる。

ベルリン上演カンパニーが集まり、カンパニーミーティングが始まる。Aschがカンパニーの前で、「これは私の初めての戯曲です。Jewishである我々が、人間としての複雑な感情をどう表現すべきか、我々の罪をどう表現すべきかを考えてきました。これまでは短編小説や詩しか書いてこなかったけれど、戯曲を書いて初めて、(こうしてカンパニーと一緒に作品を創り上げることで)アーティストとしての孤独を感じなくてもいいのだと分かったのです。」と挨拶。ここでもLemmlはAschへの敬意を忘れず、舞台奥から大きな箱を引っ張り出して、その上に乗ってスピーチをするよう促す。

ベルリン公演が無事に成功し、その後も世界各地でGod of Vengeanceは成功を収めていく。その過程でステージマネージャーとなったLemmlはアメリカに渡り、アメリカでの英語版公演に踏み切る。その頃、Aschは既にアメリカに移民として渡っていた。アメリカに到着したLemmlを港で迎えたAschはアクセントの強い英語で言う、「Welcome to America」。そして、イディッシュ語で「君は僕の初めてのadvocate(考えや概念を一般に広める役割を担う人)だ」と。

アメリカでの英語公演も成功し、カンパニーはブロードウェイでの公演が決まったことを告げられる。しかしMankeを演じ続けてきたDorotheeが台本を持って「なぜ台本を書き換えたのか!レインシーンがなくなっている!Aschはこの書き換えに賛成したのか!?」と怒る。ブロードウェイ上演に際し、MankeとRifkereの関係性と最も美しいシーンは書き換えられたのだ。

その頃、Aschは医者にかかっていた。キエフやビルナへのポグロム(ユダヤ人への迫害行為)視察旅行から帰ってきてから、様子がおかしいことをMadhaが気にかけ、心配していたのだ。Aschは眠れない、食欲がわかないといった症状に悩まされ、ブロードウェイ上演のリハーサルにも顔を出していなかった。医者は役に立たないと判断したMadjaはAschをブロードウェイのオープニングナイトに連れ出す。

God of Vengeanceのブロードウェイオープニングナイト、ブロードウェイ史上初の女性同士のキスシーン。しかし、意図しない戯曲の書き換えに驚いたAschは、幕間にLemmlやプロデューサーのHarryを探しにバックステージに向かう。しかしそこに警察が現れ、終演後、キャスト全員がわいせつ罪の容疑で逮捕される。裁判でGod of Vengeanceは「indecentで、obsceneでimmoralな戯曲」だと表現され、有罪判決を受ける。

LemmlはAschの家に向かい、なぜ戯曲の書き換えに同意したのかを問う。Aschの答えは「内容を確認しなかった」というものだった。理由として彼は「私は英語がほとんど読めないし、話せない」と自身の言語コンプレックスを吐き出す。そんなAschにLemmlはポーランドに帰ると告げるのだった。Lemmlの最後の一言は、「あなたの戯曲は、私の人生を変えたんだ」。
Official1.jpg

<感想など>
上記あらすじは、全体の4分の3くらいをカバーしています。

Indecentのテーマはanti-Semitismとアートのcensorshipについてだと思います。LemmlとAschのやりとりにもあるのですが、この作品を観て、a play belongs to who?(戯曲は誰のものか?)ということを考えさせられました。そして舞台芸術が人の人生を変えること、舞台芸術は時代を映す鏡になること。これらの要素をanti-Semitismやcensorshipと共に織り込んだという意味で、Indecentは戯曲として強いメッセージを放っていると思います。結果的に、とても好きな作品になりました。

Lemmlによって繰り返される"this play changed my life(この戯曲は私の人生を変えた)"や、Lemmlの「テイラーとして生きる方がよっぽど稼げる、でも金のためにこの戯曲を上演してるわけじゃない!」というセリフ、Aschが戯曲の書き換えを承諾した理由には、今の自分の立場だからこそ共感できる部分もありました。

RifkereとMankeが最後に立ち去るところは、アウシュビッツへの列に並ぶLemmlの心情のシンクロが美しいです。Lemmlの最後のセリフ「Please don't let this be ending...」は、複数のメッセージを持ちます。

副題としてのユダヤ人迫害については、20世紀初頭のポグロムからWW2におけるホロコーストへと移っていきます。この戯曲において、最後にGod of Vengeanceの上演場所として描かれるのはポーランドのゲットーの屋根裏部屋です。戯曲前半で、ユダヤ人迫害を逃れるためにアメリカに移民するユダヤ人が港で列をなしている様子はan impossibly long lineと表現されていますが、後半、同じ表現が、アウシュビッツに向かうユダヤ人の列を表現する際に使われます。


今回は久しぶりにシリアスな役柄で、しかもストプレでのMarkが観られました。本当にMarkという人は美しいなと思います。舞台上の動きが美しいし無駄がない。

余談ですが、観客のほとんどが70~80代以上と見られるCaucasionで、いつもの如く、20代に見える30代アジア人女性の私は非常に目立っていたわけですが、Yiddishのセリフを聞いて劇場から笑いが起こっていたのが興味深かったです。彼らは、英語とフランス語とイディッシュ語を操るのですよね(モントリオールはケベック州で、フランス語圏です。街中には英語表記がほとんどありません。)。もちろん、そんな笑いが起こる時は、私は置いてけぼりです…。ルームメイトがJewishなのでイディッシュ語について聞くと、彼(推定50歳前後)の両親は難なく理解できる、彼自身はまあある程度理解できる、彼の娘(25歳前後)世代は理解できる人はほとんどいないということでした。

Indecentは来シーズン、Mirvish x Studio180で上演されます。日本でも是非、上演してほしいですね。


■Cast
Ryan Bommarito -The Stage Manager (Lemml)
Cara Krisman -The Ingenue (Chana), Madje Asch
Mark Uhre -The Ingenue (Avram), Sholem Asch
Julia Juhas -The Middle (Halina)
Dov Mickelson -The Middle (Mendel)
Felicia Shulman -The Elder (Vera)
Sam Stein -The Elder (Otto)

Gabriel Paquin-Buki -Mayer Balsam
Brigitte Dajczer -Nelly Friedman
Sergiu Popa -Moriz Godowsky

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